Tuningテスト問題バンクでは, 次の参照基準に基づいて, 機械工学分野の学修目標の達成度評価(学修成果アセスメント)の方法論の開発に取り組んでいます.
1. 機械工学分野の教育内容の区分
2. Tuning テスト問題バンク機械工学分野のコンピテンス枠組み
取組の背景
工学分野では, 技術者の国境を越えた移動が活発化する中で, 技術者に求められる力量, そしてその基盤となる技術者教育の質の国際的同調性を確保することを目指す動きが, 1980年代末ごろから顕在化してきました. 例えば, 技術者教育の質的同等性を国境を越えて相互に承認し合う協定, いわゆるワシントン・アコードがアメリカ, イギリス, カナダ, オーストラリア, ニュージーランド, アイルランドの6か国を代表する技術者教育認定団体による調印によって1989年に発足し, 日本技術者教育認定協会(JABEE)(1999年発足)も2005年から加盟しています. このことによって, JABEE認定プログラムを卒業した学生は, 他の協定国の認定プログラムの卒業生と同等の資格を認められ, 協定国において技術者として活動しやすくなりました.
同様に欧州では, 欧州技術者教育適確認定ネットワーク(ENAEE)が認証する7つの団体(ドイツ, フランス, イギリス, アイルランド, ポルトガル, ロシア, トルコ, ルーマニア, イタリアを 代表するアクレディテーション団体)が適格認定を行うEUR-ACE制度が2004年に発足し, 欧州高等教育圏内の技術者教育プログラムの質保証を行っています.
工学分野におけるこれらの実績を踏まえて, 経済協力開発機構による高等教育における学習成果調査(OECD-AHELO)フィージビリティ・スタディでは, 二つの枠組みの基準の共通点 を抽出する形で, チューニングの手法を援用しながら, 「Tuning-AHELO工学分野におけるコンピテンス枠組み」が定義されました(表1参照).
表1.Tuning-AHELO工学分野におけるコンピテンス枠組み(既存枠組みとの関係)
なお, OECD-AHELOフィージビリティ・スタディでは, Tuning-AHELO工学分野におけるコンピテンス枠組みの5つのコンピテンス領域を, 図5の通り概念化しています. すなわち, 「工学的分析」「工学デザイン」「工学実践」の下位コンピテンスから構成される「工学プロセス」のコンピテンスは,「工学基礎・工学専門」及び 「工学ジェネリックスキル」のコンピテンスに下支えされる「高次」のコンピテンスと想定しています. そして, 「工学基礎・工学専門」の学習成果は主に多肢選択式問題, 「工学プロセス」「工学ジェネリックスキル」の学習成果は主に記述式問題で測定することを目指しています. OECD-AHELOフィージビリティ・スタディのテスト問題の一部は, AHELOフィージビリティ・スタディ報告書(OECD, 2012)に公表されています.
図2.Tuning-AHELO工学分野におけるコンピテンス